ブラック/クロスロード

魔王「今日も平和だ飯がうまい」の小説版。グロ注意。

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黒衣の章・17

黒衣の章・17
「さて」
「うん?」
「何をして時間を潰すか」

部屋に入ったはいいが、肝心のすべきことが見当たらなかった。
読書も最近飽き気味で、昼寝をするほど眠くもなく、小腹も空いていないときた。
エリシアを構うにしても字の手習いをさせても最近はつつがなく進み時間を取らさず、させることが見当たらない。
さてどうしようかとぼんやり窓の外を眺めていると、抱えたままでいたエリシアがやおら私の襟元を引く。

「あ、あのね」
「何だ」

見下ろせばやたらと近い所に顔があった。そのため私は少々たじろいでしまうのだった。
距離もそうだが、期待に満ちあふれむやみに輝くエリシアの瞳の中に、なんとも……な顔をした私が映っていたのだ。
様々な自覚をひとまず頭の深い部分に押しやり平常な顔を作ってみせると、エリシアがにこやかに首を傾げた。

「おそとであそびたいな。だめ?」
「ああ、庭か。それなら今日はやめておけ」

再度窓に目を向ける。今日はやや重い空模様であり、雨がそろそろ降り出しそうだ。
傘を差してまで出る程ではないし、何より体調を崩されては困るのだ。しかしエリシアは首を横に振る。

「おへやのそと」
「……城の中か?」
「うん!おしろ、みてみたいの」
「ふむ……」

力強い頷きが返された。好ましいと言えば好ましい様である。
言い付けをよく聞く上、以前に比べれば意思の疎通がスムーズで扱いやすく、どうでもいいことではあるが私によく懐いている。
しかし、だからと言ってみすみす自由を与えるわけにはいかないのだ。
今も中庭に連れて行く道中手を放してやらず、寄り道もさせず、少々の運動のためという名目を忠実に守っている。
それがいきなり城を見てみたい、ときた。からかわれているとしか思えない。

こいつは人間であり、更には被誘拐者である。我が城で命があるだけマシでだろう。
ならば私はどう対処するべきか。ただ一言『駄目だ』とだけ口にすればいい。
単純かつ至極当然の流れと言えるだろう。
しかし、しかしである。
どういった調子で言えば最も穏便に伝わるか。
駄目だ、という言葉も何とはなしに拒絶の意味合いが強いような気がする。
またいつか、と無期延期を告げ誤魔化したとしても具体的な時期を聞かれると非常に困る。
何が困るのかがいまいちよく分からぬ辺りも厄介だ。
こうして私は黙り込んでしまうのだが、それを不安に思ったのだろうか。エリシアは私をじっと見つめ。

「だめ?」

たった一言だけをぶつけるのだった。
私に向けられたその目と声には、僅かな寂しさが隠れていた。隠されているような気がした。
だから、と言うわけでは断じてないのだが。

「まあ……出してやっても構わんが」
「ほんと!?」

折れてやらざるを得なかった。するとエリシアはぱっと顔を輝かせる。

「ありがとう!きゃー!」
「……やめろ」

更に感極まってか、私の首に抱き付ききゃっきゃと騒ぐのだった。
無理に引き剥がすのも怪我をさせてしまいそうで、しばらく気が済むまで放置しなければならなくった。
まあ、結局城のどこに行こうがこんな子供に逃げ出す事など不可能だろう。
城をうろつく間ずっと手を捕まえていさえすれば問題はない。
気がかりと言えばジンやズィーベン辺りに出くわした時どのような顔をされるかだが……。

「まあ……適当にやり過ごすか」
「なぁに?なになに?」
「何でもない」
「うんー」

頭をぽんと叩いてやると、それだけでエリシアは大人しくなってしまうのだった。
実に簡単な生き物である。少々先行きを案じてしまう程度には。
私はひとまずエリシアを床に下ろしてやる。

「しかし、城のどこに行ったとしても同じようなものだぞ。何か見たいものでもあるのか?」
「あのね、かくれんぼ!かくれんぼしよ!」
「は?『かくれんぼ』?何だそれは」
「かくれんぼしらないの?」

きょとんと不思議な顔をするエリシア。そう言われても心当たりがまるでなかった。

「あのね、かくれて、さがすの!みつかったらおにになるの!」
「何だその禍々しい儀式は」

その後鬼がどうこうと身振り手振りで説明させることには、単に子供の遊びらしい。
一人が『鬼』と呼ばれる捕獲者になり、それ以外がどこかに隠れ全員が見つかればゲーム終了。
その後最初に見つかった者が鬼を変わりゲームを続ける。
たったそれだけの単純なルールを説明するため、無意味に手をばたつかせ意欲満々といったエリシアを見ていると、ああ平和だなと思われた。
私はそれをぼんやり眺め、話半分の相槌を返すだけだ。極めてぞんざいな処遇にエリシアの上機嫌が消えることはない。
一人騒がしく粗方の説明を終えたと判断したのだろう。しばらくしてからエリシアは得意げに胸を張る。

「かくれんぼ、わかった?」
「ああ」
「じゃあね、じゃーんけんぽん!」

そんな不思議な呪文と共に、広げた手を差し出した。『かくれんぼ』の次はこれか。
またしても私の知らない儀式か遊びを始めたいようである。

「……は?」
「じゃ、じゃーんけんぽん!」
「待て待て」
「ううー……じゃーんけーん」

私の静止も聞かずに、広げた手だったり握り拳だったりを怪しい呪文とともに繰り出すのだった。
しかし私が一向に乗ろうとしないからか、次第にぐずりだす始末である。
気まぐれな上に忍耐がないときた。静を良しとする私を見習わさせるべきだと今後の躾方針を打ち立てながら、とりあえずまあ頭を撫でてやれば黙るだろうかと思い。

「ぽん!!」

手を翳してみると、二本の指を突き出したエリシアの手とぶつかった。
ぱし、と小さいはずのその音がやけに大きく耳に響き私は瞬時に背筋が寒くなるのだが。

「わ、かったー!」
「……そうか」

エリシアはお構いなしで満足げににこにこと笑い始めるのだった。
よくは分からないが、私の負けらしい。ヴァネッサ辺りにルールをそれとなく尋ねておこう。
エリシアに説明させたところで、また果てしなく要領を得ず時間を無駄にすることが目に見えている。
ぶつかった手をぞんざいに撫でてやりながら、私はそう決意した。
エリシアは空いた手で私を指差し言う。

「まおうさんがおに!」
「指を指すな。隠れるお前を見付け出せば良いのだな?」
「うん。かくれるの。まおうさんはひゃくかぞえてから、さがしてね。じゃあかくれ」
「ちょっと待て」

早速部屋を出て行こうとする後ろ姿を捕まえた。
「なんで?」と立場を理解していない顔で振り返るので、やや頭が痛くなった。
仕方なしに再度抱き上げ動きを封じる。

「お前一人でうろつかせてなるものか。ヴァネッサを付ける」
「ヴァネッサおねーちゃんもかくれんぼするの?じゃ、じゃあね、あと」
「監視させるだけだ。ヴァネッサ、おいヴァネッサ」

しかしいくら名前を呼んでもヴァネッサは現れなかった。
平時ならばどこにいて何をしていようとも、二度ほど名を呼べばすぐに馳せ参じるはずなのに、今日に限って妙である。
私をないがしろにしがちであるとは言え、彼女は一応長い付き合いの手下であり固い忠誠を誓っているはずで……。

「来ないね」
「そんなはずは……ヴァネッサ?」

そして何度めの呼び出しだろうか。ようやくヴァネッサから返事があった。
ひらりとどこからともなく小さな紙きれが落ちてきた。
拾い上げると『ただいま手が離せません。水入らずでお楽しみ下さいませ』と記名すら放棄した馴染み深い筆跡。
私はそれを、ぐしゃりと握り潰すのだった。

「何だろうな……近頃のこの扱いは」
「げんきだしてね?」

文字が読めないながらに何かを悟ったらしく、エリシアは私の頬を撫で慰めるのだった。
正直よくやるものだ。
もういいとその手を制し、私は渋々廊下に出てエリシアを解放してやる。
そうしてしゃがみ、しっかりと目を合わせ言い聞かせる。

「いいか、行ってもいいのはこの階だけだ。階段は使うなよ」
「わかりました!エリシアかくれるの!」
「走るなよ」
「はーい!みつけてね!」

手を振り消えていく背を見送って、とりあえずとばかりに独り言つ私だ。

「鬼、か……」

魔王にさせるなよと、思わざるを得なかった。

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

>D
よろしいならば通報だ!!可愛いだろうなー多分という手探りでやってます!

>3
流されてもいいかーと諦めたら後はもう落ちるだけですよ!

>B
今の所はペット扱いですが、その内独占欲出てきたりとじわじわっとry

>九
次でシュールかわいくを目指します!

>鯖
よっしゃ通報二人目だ!臭い飯食って来い!可愛くなるよう頑張ります!」

  • 2011/07/02(土) 00:21:49 |
  • URL |
  • おつかい #nAPy1gFE
  • [ 編集 ]

圧倒的幼女逃げて感把握wwww


それにしても魔王は親バカ丸出しですねーww
そしてエリシアが可愛すぎる!俺も幼女誘拐しt(ry

  • 2011/06/30(木) 18:23:07 |
  • URL |
  • 鯖 #-
  • [ 編集 ]

でも巨体を隠して見つからないようにじーっとしてるまおうも見てみたいかも。

  • 2011/06/30(木) 16:04:24 |
  • URL |
  • 九 #KzzyVg.A
  • [ 編集 ]

あら可愛い
くっそーニヤニヤさせやがってw
完全魔王がデレるのが楽しみでしょうがない( ̄∀ ̄)

  • 2011/06/30(木) 08:55:16 |
  • URL |
  • 名無しB #-
  • [ 編集 ]

ハァハァ(*´Д`*)フゥフゥ

流される魔王さまイイヨイイヨ!どんどんエリシアと仲良くなってくださいwww

  • 2011/06/30(木) 07:56:48 |
  • URL |
  • 名無し3 #-
  • [ 編集 ]

なにこの可愛い生き物。やだ、幼女欲しくなった。捕獲したい。

  • 2011/06/30(木) 00:07:03 |
  • URL |
  • スライムD #-
  • [ 編集 ]

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