ブラック/クロスロード

魔王「今日も平和だ飯がうまい」の小説版。グロ注意。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

黒衣の章・1

黒衣の章・1
魔王とは、恐怖の象徴として在らねばならない。
魔物以外の生物全て、時には同胞ですらをも脅かし踏み躙り、自身の覇道を築くためだけに企みを巡らせ駒を滑らせ、整った盤上をにやにや眺めたり、わざと引っ繰り返したりして他者に見せつけ反応を楽しみ愉悦に浸る。
詰まる所、癇癪を起こす幼子と本質的な所は何も変わらない。
ただ幼子の場合は身近な両親、玩具などに向けられるものの、魔王のそれは世界全てに対して向けられる。

たったそれだけの差異と圧倒的な力の有無とが、あらゆる者に絶望をもたらす。
思えば私の父上、先代の魔王は典型的な『魔王』であった。
幾多もの村を焼き、幾多もの国を巧みな策謀を用いて落とし、数多の生き物を死へと至らしめた。
全ては父上のためにあり、全ては父上の裁量如何で現世にあっけなく別れを告げた。

父上が人間に討たれ、私の代になってから百年が経った今でもなお、あの統治の当時を知る者達は皆一様に口を噤んで押し黙る。それほどまでに凄惨な、時代であった。

しかしそれも所詮、過去である。父上は死に、魔王は私となった。
だが私は所謂『魔王』としては、どうしようもないほどに落ち零れであった。気力的な意味で。




「そろそろ魔王様にも、まともに働いて頂こうかと思うわけですよー」

案の定私の部屋まで飛んできた奴は、開口一番意外な台詞を言い放った。

「……」

そして私は無言である。
返すべき言葉に詰まったわけではないのだが、何分今は朝食中。
よく咀嚼して食事を取ることで、病の予防なり血糖値の改善なり脳の活性化なりが見込まれる。
慌てる必要は、つまり無い。私は普段の倍ほど時間を掛け、たった一口を飲み込んだ。

「……仕事なら、しているだろう」
「あはは。魔王様は冗談がお上手ですね」

そして私が何とかして絞り出した言葉に対し、朗笑するジン。
目元は緩かに落ち、全体的に柔和な笑みと言えなくもないのだが、何分額の目一つだけは射殺さんばかりに刺々しい。

この男、ジンは容姿こそ人に近いものの、れっきとした魔物である。
それも魔王一番の腹心という名誉ある地位を有してさえいて、平たく言えば私の下僕だ。
銅色の髪と程々に屈強な体は獣じみた印象を与え、額には爛々と輝く第三の目。
中々に強健な見た目をしており、人間の戦士がいくら束になってかかった所で、こいつに傷一つつけることは叶わないだろうという、見かけ倒しでは終わらない実力すらも有している。
私の矢面に立ち、あらゆる面倒事を一身に引き受けてくれるはずのその頼もしい男は、しかしながら主への敬意というものが、著しく欠けていた。

「一応伺いますが、魔王様が最近なさったお仕事って何がありますか?」

文章に起こせば、さぞや慇懃に並ぶであろう言葉の羅列。しかし込められた感情は推して測るべし。
私は食事の手を休めることなく、むしろ休めた瞬間が砦崩壊の要となるだろうと予感して、休めるわけにはいかなかった。
視線は皿の上に乗った諸々を見つめているようでいて、食事皿テーブルクロステーブルまでもを貫き通し、見えるはずの無い床にまで突き刺さっていた。単に視界が、床と同色の曇りない真白に染まっていただけかもしれない。
とにかく私は感覚的に食事を切り分け口元に運ぶのだが放り込んだ瞬間、極度の緊張下に置かれて舌が麻痺したのかまともに味蕾は刺激を受け付けず、ぶにゃりとした触感と容赦のない熱さだけが不意打ちのように口の中を満たす。僅かながらの嗅覚で、それがオムレツであることを辛うじて認識するといった程度である。
耐え偲び死力を尽くして嚥下し、その一口の代わりにと私は苦しい単語を吐き出した。

「……様々な書類に判を押した」
「その内の一枚でも書かれていた内容把握していますか?」
「お前が寄越す物だ。どうせ予め、入念なチェックが入っていることだろうと思ってな」

言葉そのままに、私の仕事に対する姿勢は全て信頼の証なのだが、あからさまに顔を歪めるジン。
そろそろ微笑のストックも切れるようで、次第に頬筋が痙攣を見せ始めた。

「ほ、他にも仕事ならやっているだろう」
「何をですか?」

これはマズイと思い続けた私に、容赦なくジンは微笑と言う名の攻撃を飛ばす。
あからさまに急所狙いで殺る気が見えて、魔王の私ですら多少背筋が寒くなった。
腰に下げた剣の柄に無意識にか指を這わせて微笑む様は、いっそシュールとしか言い表せそうにない。

「城の景観を良くするため」
「ご趣味の園芸が仕事?」
「……いや、まだあるぞ」
「はー、何すかねえ」

剣呑としか言い表せない、色を失くしたジンの顔。
そこに私は自信を持って人差し指を突き付ける。そして最終的な弁論を吐くのだが。

「この城の、警備員だ」
「いい加減にしやがれクソニートが!!」

何故かそれが契機となり、激昂という段階にまで押し上げてしまったようであった。

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

Re: タイトルなし

自宅警備員の進化版です。ぼうぎょが上がりますが、社会性が下がります。多分。

  • 2013/04/14(日) 16:20:00 |
  • URL |
  • おつかい #-
  • [ 編集 ]

お城警備員で吹いたwww

  • 2013/04/10(水) 12:49:23 |
  • URL |
  • #-
  • [ 編集 ]

ふふふニートがアイデンティティですからね(*´∀`*)

  • 2012/08/17(金) 23:26:02 |
  • URL |
  • おつかい #-
  • [ 編集 ]

相変わらずのニートっぷりww

  • 2012/08/16(木) 00:57:04 |
  • URL |
  • #-
  • [ 編集 ]

駄目じゃないと話進まないもの…(´∀`)ww

  • 2010/12/17(金) 22:45:30 |
  • URL |
  • おつかい #-
  • [ 編集 ]

魔王様、相変わらず駄目な子やねぇ………。

  • 2010/12/14(火) 00:59:31 |
  • URL |
  • 水無月 #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://maomesiuma.blog112.fc2.com/tb.php/2-513fd41c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。