ブラック/クロスロード

魔王「今日も平和だ飯がうまい」の小説版。グロ注意。

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交差路の章・28

交差路の章・28
(交差路の章 完)
「それよりお前よ。あの王族の能力ってやつ。俺なりに調べてみたんだがどこにも文献が見つかんねーんだ。
 どうやら門外不出のとっておきらしい、ってことまでは突き止めたけどよ。結局その力ってのはなんなんだ?」
「ああ、それは」

黒の魔物は口を開き、しかしふと何かに気付いたようにそのまま言葉を飲みこんでしまう。
男は怪訝に眉を寄せる。ゆるゆると首を振る黒の魔物。

「いや、また時期が来たら言う」
「なんだそりゃ。まあいい。こうなりゃ俺もヤケだ。手下走らせまくって、どうやっても突き止めてやるよ」

意地の悪い笑みを浮かべながら、男は机の首を無造作に掴み革袋に放り込んだ。
首はまたも悲鳴に近いくぐもった音を漏らすのだが、男も黒の魔物も何の反応も示さない。
黒の魔物がただ机に残った血の塊を、不愉快そうに手で払い除けた。そうして男をじろりと睨めつける。

「私も一つ聞きたいのだが」
「何だよ」
「お前が以前言っていた、私を悪し様に言う血の気の多い魔物とは……お前のことだよな?」
「ああ? 何言ってんだお前。当たり前だろ」
「だよな……」

はあ……と深くため息をつく黒の魔物。
男はその肩をばしばしと気楽に叩くのだった。

「まあぶっちゃけて言うとだな、お前の威信に陰なんか落ちるわけねえだろ。
 真っ向からケチつける奴なんか万が一いりゃ、俺が真っ先に意気揚々と粛清してるっつーの」
「では何故、あんな焚きつけるような真似をした」
「んなもん決まってんだろ」

男は黒の魔物に顔を寄る。
その目は針のように尖鋭であり、卑俗であり、烈々であり、また悪童のような無邪気さを備えていた。

「ベル。お前はあの決断を成した時から、ずっと俺たち魔物の王だ。指標だ。神なんて生温いもんじゃねえ。
 そんな奴が腐っていく様を、俺は百年耐えてきた。だがそろそろ限界だ」

そして男はニッと笑う。

「俺と一緒に悪巧みをしようじゃねえか、昔みたいによ」
「全く……面倒な右腕だ」

黒の魔物は心底煩そうに、男の顔を払いのける。
しかし黒の魔物はどこまでも楽しげで、また男と同じ子供じみた眼をしていた。
男はそんな黒の魔物に、悪意を薄めて苦笑する。

「ま、この展開はちょっと予想外だったがな」
「……ああ」

そこで黙り込む男と黒の魔物である。
ほど近いどこかから、少女のはしゃぐ声と、メイドが少女を呼ぶ声とが生垣を越えて届いてきた。
男は肩を竦め、頭を振る。

「エリシアはもう人の世界じゃ住めねーだろうよ。色んな意味でな」
「そうだな……」

黒の魔物は痛ましげに眼を細め、そして小さく息を吐く。

「これで良かった……とは思うのだが。いや、思いたいだけかもしれんな」
「それは……うん、俺からは何も言えねえな」

頬を掻きつつぼやく男。黒の魔物はそれに剣呑な眼差しを送るだけだった。

「ズィーベンといい、お前といい、私に隠れてあの子と一体何をしていたんだ。何時の間にやら懐いているし」
「その辺もまたおいおい話すさ」

男は革袋を肩に担ぎ直すと、片手を上げて言う。

「じゃ、俺はこいつをあの男に見せびらかせてくるわ。さぞかし悔しがるだろよ」
「捕らえている男か……身元は割れたのか?」
「あの国で騎士号貰って間もない若造らしいぜ。名前はなんだっけかね。
 まあいいや。正義感が先走って、命令されてもいねーのにあんなバカな真似をしやがった」
「それはまたご苦労なことだ。エリシアを無事に連れ帰れていれば英雄となっていただろうが、実際は魔王城地下で半生半死だもものな。世話がない」
「その上国じゃもう鬼籍扱いだ。哀れなこった。
 あ、そうそう。その処遇なんだが、ズィーベンの奴がこんなことを提案してよ」

そうして男が身振り手振りで語る内容に、黒の魔物はにやりと笑み。

「……面白いな」
「だろ?」

男もそれに同調した。

「そんじゃ、今度酒でも飲みながらズィーベン交えてその会議をしようじゃねえか。また後でな、ベル」
「なあジン」

立ち去りかける男に、黒の魔物は静かな声をかけた。
男は立ち止まり、振り返りざまに黒の魔物の顔を伺う。
黒の魔物は肘をつき、どこか遠くを見るように目を細めていた。

「私は人間に、どうして牙を向けているのだろう。
 エリシアの復讐のためなのか、それともあの子の帰る場所を虱潰しに失くすためなのか……私にはそれが分からない」

そう言って、黒の魔物は顔を覆う。
黒の魔物のそうした様を、男はしばしえも言われぬ寂しげな目で見つめていた。
しかし男はあらゆる物を振り払うかのように前を向き、歩き出す。

「終わってから。この一件を片付けてから考えたらどうだ」
「ふむ……」

そうだな、と黒の魔物は立ち去るその背にぽつりと投げた。




黒の魔物は男を見送り、しばらくしてからのそりと椅子を立った。
生垣のアーチをくぐり抜け、中庭を見回すと。

「あ」

ジョウロを持って鉢に水をやる少女と目が合った。その隣ではメイドが雑草の芽を積んでいた。
少女は顔を輝かせてジョウロを抱えたまま黒の魔物の元へと駆け出して。

「きゃ」

べち、と見事に躓き転ぶ。
固まる黒の魔物。少女はよろよろと身を起こし、じわじわとその目に涙を浮かべ始める。
メイドは少女と黒の魔物とを交互に見やり、結局足を向けることはしなかった。
代わりに黒の魔物が少女の元に歩み寄り、小さな体をつまみ上げて土埃を払ってやる。

「全く……お前は注意力が足りない」
「うっ、うぇ……ごめんなさい……」

べそをかき、少女は黒の魔物の胸に顔を埋めて精一杯に甘える。
黒の魔物はその頭を優しく撫でた。
そのまま黒の魔物はぽつりぽつりと語り始める。

「エリシア。しばらく私は魔王として……人に戦争を仕掛けることになった」

少女は啜り泣きをぴたりと止める。
黒の魔物は語り続ける。

「お前を虐げ、捨てた人間達にささやかな復讐をしてやろうと思う。
 だがそうすると城が騒がしくなるだろう。お前にはそうした喧騒を、なるべく見聞きさせたくはない」

少女は黒の魔物を見上げる。
黒の魔物はそれを見下ろし、微笑み言う。

「だからエリシア。しばしここから離れた隠れ家で待っていてはくれないだろうか。
 世話のメイドと魔物を何体かつけてやるから、寂しい思いをさせはしない」
「うん……」

少女は決意を込めた表情で、力強く頷いた。

「エリシア、いいこにしてまってる」
「ああ……すまんな」
「だからね」
「うん?」

早く帰って来て遊ぼうね、お父さん。
黒の魔物は少女の髪に唇を寄せ、たった一言をつぶやいた。

「勿論だとも」

私の子。





交わる道が分かたれた。

(交差路の章⇒王の章)

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

>2-Muchさん
まあ基本この話は加害者しかいねえってテーマなので!
立ち位置変われば正義も変わる…みたいな空気が出せたらいいなあ。

  • 2012/03/23(金) 00:19:36 |
  • URL |
  • おつかい #nAPy1gFE
  • [ 編集 ]

人の子たる身にはちょいときついですな。
まあ、魔に魔の分があるからお互い様ですけども。

  • 2012/03/22(木) 00:40:12 |
  • URL |
  • 2-Much #-
  • [ 編集 ]

>林田さん
次回からものすごくアレなんですがねエリシア!(*´∀`*)
またちまちま書いてブチ込みます!

>3さん
しばらくの退場です!!まあ回想多いのでわりとちょこちょこ出てくると思われますwww

>下僕さん
名前それでええんか?(; ・`д・´)
短編とかで遊ばせます!

  • 2012/03/20(火) 23:17:32 |
  • URL |
  • おつかい #nAPy1gFE
  • [ 編集 ]


『早く帰って来て遊ぼうね、お父さん。』

この言葉がやけに胸にくる(泣)

  • 2012/03/19(月) 17:50:34 |
  • URL |
  • 下僕 #-
  • [ 編集 ]

おとおおおおおおおおさあああああああん!!!!(つД`)

  • 2012/03/19(月) 14:27:50 |
  • URL |
  • ななし3 #-
  • [ 編集 ]

早ッ!

今回もニヤニヤしながら読ませて頂きました。活力をありがとうございます!エリシアちゃん!
ご自愛を祈りつつ、次回の更新も楽しみにさせて頂きます。

ああお義父さん……

  • 2012/03/19(月) 03:46:36 |
  • URL |
  • 林田 #-
  • [ 編集 ]

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