ブラック/クロスロード

魔王「今日も平和だ飯がうまい」の小説版。グロ注意。

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ズィーベン短編

ズィーベン短編(ハロウィン合わせ)
「お菓子と死体、どっちがいい?」
「……ハァ?」

突然叩き起こされたかと思えば、そんな訳のわからない二択を突き付けられた。
言葉だけそのままとれば極端な脅しだが、相手は紛れもない好意をもってオレの上に寝そべって、無意味ににこにこしていやがる。
カーテンの隙間からは燃えるような西日が差し込んでいた。まだ日も沈みきらない、オレが起きるには早すぎる時限。
睡眠を邪魔され、更に上にはマイペースを絵に描いたようなバカが乗っかっている。これで怒らないヤツなんていないだろう。
オレは頭をがしがしと掻きむしり、苛立ち混じりに低く呟く。

「ナァ……重いンだケド」
「大丈夫だって。ズィーベン打たれ強いし」

だが、抗議に返ってくるのはこんな身も蓋もないセリフだ。
それを決めるのはオレであってお前じゃねえ!という言葉をぐっと飲み込むオレ。
代わりにぶっさいくなツラを摘まんでひねってやるが、バカは馬鹿面をやめようとしない。
オレが加減してやってるからって、いつでもこうして調子に乗りやがる。
仕方なく、バカを乗っけたままでオレは尋ねることになった。解せねえ。

「えーット……ナンだ、菓子カ死体カ?ドウいウこトダ?」
「今日はね、お菓子をあげる日なんだって!」
「へーエ」

バカはオレに顔を近付けて、くすくす笑う。

「だからズィーベンに聞きにきたの!どっちが欲しい?」
「死体ガ選択肢に入ル理由を聞こウカな」
「そっちの方が喜ぶかと思って」

あっけらかんと言うバカ。
付き合って長いが、やっぱりこいつはバカだった。オレはあからさまため息をぶつけてやった。

「あのナァ……オレはそウイウ術が得意だッテだけデ、四六時中死体のこトバッか考えて生きてルワけじゃねェンだぞ?」
「知ってるよ。でもさあ」

バカはにこにこと言う。

「戦場で死体を漁るズィーベン、すっごく楽しそうだよ?」
「……」
「そういう時のズィーベン、私好きだなあ」
「グッグッ……」

お前ほどでもねえさ、とぼかして言えば、バカはニヤリと冷たく笑った。
まったく、昔はもっと可愛げがあったってのに。どこで間違えちまったのか。それもこれも全部魔王様が悪いんだが。

「死体なラ、イツデも手に入ル。なンセお前がいルかラナァ」

頭を撫でてやると、バカは猫のように目を細める。そうした仕草は、ガキの頃からちっとも変わらない。腹が立つ。

「だカラ今回ハ菓子をモラッてやルさ」
「うん、わかった」

するとバカは小包を取り出して、はい、と差し出した。不器用にリボンが巻かれている。
オレはそれを受け取って、空いた片手でバカを撫でる。撫で続ける。

「グッグッ……ま、捨てチマわなケリャ食ッてヤルよ」
「絶対だよ?ズィーベンからはお菓子とかいっぱいもらうでしょ、そのお返しも兼ねてるんだから」
「バーカ」

ぐしゃぐしゃと、バカご自慢の金の髪をかき混ぜる。

「これッポッチで足リる訳がネェだろが。オレがドンだケお前ノ面倒見てヤッたと思うンダ」
「うー……それもそうか」
「ダカラ」

次は死体の山を寄越せよな、とバカを抱きしめ囁いた。
バカは馬鹿みたいに頷いた。何度も何度も。恐らく満面の笑みを浮かべながら。
これでまた、どっかの村だか街だか国だかがあっさり地図から消えることだろう。オレのせいで。
だがオレは罪悪感なんて高尚なものは欠片も持ち合わせていない。
バカが戦場で翔ける姿を間近で見られる喜び。あるのはせいぜい、そんなところだ。あとはオマケ程度に魔王様への軽い忠誠心か。いや、あの方のことは確かに尊敬しちゃいるが、可愛いかどうかと聞かれりゃバカに軍配が上がるもんで。
しみじみ感傷に浸っていると、バカが少し体を起こす。
そうしてお返しとばかりにオレの顔を撫でまわした。
無数に刻まれた古傷をなぞり、色のおかしい皮膚の感触を確かめる。潰れた目も千切れた耳も切れた唇も、バカにとっては昔から慣れ親しんだもの。抵抗なんかさらさらなくて、むしろくすくすと笑い声まで漏らしていやがる。
そうして最後にオレの額に口付ける。よくやるよ。まったく。
バカは上機嫌に、オレに渡した包みを指差し言う。

「でも今回のお菓子は自信作なんだからね!ちゃんと食べて喜んでよね!」
「自信……作」

つまりこれはお前が作ったのか。
そっと確認してみれば、中身はなんだか鉱石のような光沢を放っているし、うっすら漏れ出る臭いはゴムのよう。
お前はいつの間に錬金術なんか嗜み始めた?
溢れ出るオレの嫌な汗を察することなく、バカはオレの上から降りた。

「じゃあまた後で遊ぼうね、ズィーベン」
「ヤナこッた」

いつものセリフにいつもの文句で返せば、バカは満足そうにぱたぱたと部屋を出ていった。
しかしあの餓鬼も大きくなったもんだなあ……と感慨深く、手元に残った劇物を見つめるオレ。

「ドウしろッテんだ」

捨てるのもなんだし、とりあえず魔王様に献上すっか。不死身のオレでも死ぬのは嫌だ。


(了)

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